スリランカについて読むと、たいてい二つの物語に行き当たります。債務危機と、そこからの回復です。どちらも事実です。しかしどちらも、コロンボの技術産業で起きていることを説明しません。
スリランカのスタートアップ・エコシステムは、2024年時点で約2億5,200万米ドルと評価されています。ストックホルムやヘルシンキと比べれば小規模です。そこに流入する人材と比べれば、そここそが要点です。
人材の数字が本質
スリランカは毎年およそ5万人のIT系卒業生を輩出しています。モラトゥワ大学やコロンボ大学などが中心です。とりわけモラトゥワは、工学的な厳密さで地域的な評価を得ています。
これを国内市場の規模と並べると、見えてくることがあります。輸出のために構築された人材基盤だということです。スリランカのエンジニアは20年にわたり欧州や豪州の企業向けに開発を担ってきました。新しいのは、受託ではなく自社製品を作る側に回る人が増えている点です。
価値が生まれるのはその転換点です。受託事業は人数に比例して伸びます。製品事業はそうではありません。
2026年に何が変わったか
2026年、民間ベンチャー資本の呼び水を目的とする政府系ファンド・オブ・ファンズが立ち上がりました。北欧の読者にはなじみのある仕組みです。欧州のいくつかの市場でアーリーステージ資金を育てた構造と同じです。これだけでエコシステムができるわけではありません。ただし、最初の一枚が不足するという固有の問題には効きます。
TiECon Sri Lanka 2026 は、同国初のグローバルな起業家サミットでした。重要なのは催し自体より、誰が参加し、誰が姿を見せることを選んだかです。
ディアスポラは感情ではなく資本の経路
スリランカには、際立ってシニアなエンジニアのディアスポラがあります。ロンドン、シドニー、シンガポール、トロント、ベイエリアで働くプリンシパルエンジニア、技術部門の責任者、創業者たち。その相当数が、いまコロンボに投資し、助言しています。
投資家にとって実務的な意味があります。アーリーステージの企業が、技術面のガバナンスを備えた状態で現れることが多いのです。コロンボの初回創業者に、他国で数百万ユーザー規模のプラットフォームを運用した助言者が付いている例は珍しくありません。この評価水準の新興市場では一般的ではない特徴です。
もはやコロンボだけではない
ICTA が支援する地域スタートアップ拠点を背景に、ジャフナとキャンディでも拠点が育っています。とりわけジャフナは注目に値します。工学教育の伝統、独自の大きな国際ディアスポラ、そして首都を大きく下回る運営コストがあります。
人材が分散していることは、賃金インフレのリスクを抑えます。過熱したエコシステムで投資リターンが圧縮される最大の要因がそこにあります。
見落とされがちな三点
第一に、カントリーリスクを織り込んだところで思考を止めてしまうこと。 マクロの改善は本物ですが、それは投資仮説ではありません。仮説は、欧州と重なる時間帯で働くシニアエンジニアを、欧州主要都市の何分の一かのコストで確保できるという人材アービトラージです。
第二に、消費者向け企業を探してしまうこと。 強いスリランカ企業は、B2Bソフトウェア、フィンテック基盤、初日から国際市場に売る垂直型SaaSに多く見られます。
第三に、実績が出るまで待ってしまうこと。 目に見えるエグジットが出る頃には、参入価格はすでに動いています。総額約2億5,200万米ドル規模のエコシステムが、いつまでも静かなままではありません。
見極めるには現地に立つこと
創業者の質は遠隔では測りにくいものです。しかしコロンボでの3日間の面談、モラトゥワ訪問、地域拠点の運営者との対話があれば、十分に判断できます。
そうした視察をお手伝いします。面談、移動、そして長距離フライトを二度でも厭わないと思わせる延泊まで。
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よくあるご質問
+スリランカのスタートアップ・エコシステムの規模は。
2024年時点で約2億5,200万米ドルと評価されています。より重要なのは、年間約5万人のIT系卒業生という人材の流入です。
+技術人材はどこから供給されますか。
モラトゥワ大学やコロンボ大学などが中心で、年間およそ5万人のIT系卒業生を輩出しています。特にモラトゥワは工学的な厳密さで地域的な評価を得ています。
+2026年に資金環境は何が変わりましたか。
民間ベンチャー資本の呼び水を目的とする政府系ファンド・オブ・ファンズが2026年に立ち上がりました。TiECon Sri Lanka 2026 は同国初のグローバル起業家サミットでした。
+拠点はコロンボに限られますか。
いいえ。ICTA が支援する地域スタートアップ拠点を背景に、ジャフナとキャンディでも拠点が育っています。人材の分散は賃金インフレの抑制にもつながります。
+ディアスポラはどのような役割を果たしていますか。
スリランカには際立ってシニアなエンジニアのディアスポラがあり、その相当数が母国に投資し助言しています。そのためアーリーステージの企業が技術ガバナンスを備えた状態で現れることが多くあります。



